本作は、お馴染みかわせみシリーズの二十一冊目です。
表題作は、職人の祖父が孫息子に向けた慈愛に、心打たれる傑作。
ヒロインのるいさんが、出先で買い求めた可愛い犬張子の玩具。
ところが、特注品と間違えたとかで、職人の老人がわざわざ交換に来ました。快く応じたものの、どこが特別仕様なのか不思議に思う面々。
それから少し後、あの老人が斬り殺されたとの知らせが。
犬張子ひとつを持って、主人公の東吾に、何かを相談しようとしていた様子。
そして葬儀の日、今度は職人の娘が絞殺され、部屋には何かを探した形跡が……。
このままでは、残された孫の徳太郎が危ない。
彼を探して走る東吾ですが、向かったかわせみでは、ならず者達とかわせみ関係者の激しい戦いが始まっていました。
祖父を亡くした徳太郎が、小さいのに、母に言われた道を必死に逃げる姿に涙を誘われます。
ならず者は捕まり、母親を殺した犯人も判明しますが、そこには大店の後継者争いが……。
徳太郎は、亡き大店主人の隠し子だったのです。
それを証明する証を、祖父は驚きの場所に隠していました。
職人か、大店の主人か。孫の幸せは何か悩み、可愛らしい玩具に託す祖父の想いに打たれます。
徳太郎がまた、祖父想い、母親想いの良い子で……。
かわせみシリーズの中でも、特に好きな話です。