本作は、かわせみシリーズの二十三冊目。
東吾が、ある女性が密かに自分の子を産んでいたことを知り、衝撃を受ける「虹のおもかげ」。
そして、長年子宝に恵まれなかった東吾とるいの夫婦に、待望の長子が産まれるエピソードが印象的です(皮肉なタイミングですが……)。
まず「虹のおもかげ」。
東吾が夏の朝、偶然出会った少年の蝉とりを手伝います。
小さい頃の自分を思わせる、元気な彼の姿に、優しい気持ちになる東吾。なぜかその子の姿が、何日経っても脳裡から消えないのですが……終盤で彼が、かつて関係を持った女性の子だと知ります。あの子は自分の子に違いない、と確信する東吾。
妻のるいさんと、隠し子への愛しさで板挟みになり、苦悩します。
そして、宗太郎のアドバイスでなんとか落ち着いた矢先、るいさんの懐妊が判明。
長年子宝に恵まれなかった夫婦に、待望の娘・千春が誕生するのが「立春大吉」。
皆に祝福されて産まれてきた千春と、対象的に母親にかまってもらえない、近所の幼い少女の姿が切ないです。
その母親も、親に去られた過去があるのですが、その親が現れて……ネグレクトなど、現代にも通じるテーマが隠されています。
それにしても、対象的な幼女二人。全ての子供が、愛されて幸せに暮らせることを、祈りたくなります。