本作は、御宿かわせみの二十九冊目です。
個人的に、特に印象的なのは「丑の刻まいり」。
かわせみの女中のお石を訪ねてきたのは、同郷の女性・おうのさん。
江戸で嫁いだものの、理不尽な姑に言いがかりをつけられ、叩き出されたのだとか。
近所の神社で深夜、藁人形に釘を打つ、丑の刻まいりをする女が目撃されます。
そこに残されたのは、姑と同じ干支を示す紙。
お前があたしを呪っていたんだろうと決めつけ、近所に言いふらした挙げ句、おうのを追い出した姑。
すでに帰る家も無い彼女は、途方に暮れてお石を頼ったのです。
事情を聞いて同情するも、よその家に立ち入る訳にもいかず……。
心配するかわせみメンバーですが、おうのの亭主が、家を出る決意をします。
養子で、子供の頃から義母に理不尽な扱いを受けていた彼は、妻や子供達の為にも、養家を出る決心をしたのです。
祝福され出発したおうの夫婦ですが、その夜、姑が死体でみつかり、夫婦に疑いがかかります。
おうの夫婦の為に犯人探しをしたところ、それは意外な人物でした。しかも例の、丑の刻まいりの女で……。
どこまでも我が儘で、反省しなかった姑。彼女の底知れない悪意が恐ろしく感じます。こんな年寄りにだけは、なりたくない……。