人情溢れる小説「御宿かわせみ」

「御宿かわせみ」は、平岩弓枝先生の時代小説です。何十巻も続く大河シリーズですが、その中で一話だけ推すとしたら、私は一巻収録の「秋の蛍」でしょうか。

かわせみは、亡き鬼同心を父に持つ女性・るいが始めた宿。番頭は元岡っ引きだし、恋人の東吾は剣の達人で、役人の弟です。

そんな宿にやってきたのは、訳ありげな父親と娘。実はこの父親は「船頭の長七」と異名を持つ、盗賊の一味でした。
娘のお糸の為に悪事から足を洗おうと、逃亡の最中だったのです。
嵐の中、仲間を誘きだして殺そうとする長七。
絶対絶命の彼を助けようと、東吾や番頭の嘉助達が駆けつけます。
大立ち回りも見所ですが、私がこの話を好きなのは、長七とお糸が互いを大切に思う心が、本当に素晴らしいから。
娘の幸せの為に、命がけで盗賊仲間と敵対する父親。
血が繋がらなくても、一途に父親を慕う娘。そんな二人を見ていると、るいさんでなくても、思わず肩入れしたくなります。
お裁きの後、父娘は晴れて一緒に暮らせるのか。それとも、お仕置きになってしまうのか。
東吾に粋な結末を告げる、与力の兄の茶目っ気も素敵です。
ちなみに、この敏腕与力の兄・通之進と、香苗のおしどり夫婦も大好きなのですが、その紹介はまた、別の機会に。
人情と江戸情緒がたっぷりのかわせみ、オススメです。