御宿かわせみの三十三冊目。
贋金造り一派と戦う表題作も良いですが、新レギュラー・お晴登場の「稲荷橋の飴屋」もオススメ。
お石が寿退職したので、お吉の姪の紹介でやって来たのが、まだ十四歳のお晴。
天涯孤独だけど、頑張り屋のお晴は、主人の娘である千春と早速馴染みます。
千春のお稽古の供になった彼女は、稽古が終わるまで、近くのお地蔵さまで待つことにしました。
その地蔵を管理しているのは、小さな飴屋の老婆。
ですがある日、千春とお石は、老婆が小さな子供を折檻している場面に出くわします。地蔵の賽銭を盗もうとしていたから、と言いますが、お晴はショックを受けて……。
二人から話を聞いた大人達も、気になるものを感じます。
そんなある日、折檻された子供の親が、地蔵を川に投げ込もうと暴れます。
地蔵の下からは、たくさんのお金が……。
老婆の亡き夫は、凄腕のスリだったのです。
悪行が暴かれ、年をとってから島流しになった老婆。
悪行は許せないけど、自分が老婆を気にしたせいで、一人のお年寄りが捕まった……。複雑な気持ちを持て余す、お晴。
それにしても、老婆が身分不相応な高級魚を食べていることに気付いたり、かわせみメンバーらしい観察力を発揮するお晴。
老婆が苦しい生活をしているのでは?という、優しさからした行動ですが……。
それが、相手の悪事を暴くキッカケになってしまったのは、なんとも皮肉です。
おじいちゃん、おばあちゃんに育てられた、お晴ならではの行動でしょう。