我儘娘の姿に……「御宿かわせみ 白萩屋敷の月」

白萩屋敷の月は、御宿かわせみシリーズの一冊です。

一話完結の話がたくさん入っていて読み易いし、江戸情緒溢れる物語は、相変わらず素敵。

主人公の兄の初恋の女性が出てくる、表題作もそれは切ない傑作なのですが。

今回は収録作品の中の、「恋娘」という短編に焦点を当ててご紹介させて頂きます。

さて、ヒロインのるいさんは、大川べりで「かわせみ」という、小さくて居心地の良い宿を経営しています。

そこに担ぎこまれてきたのは、大店の一人娘・お鹿。

両親が年をとってから生まれた彼女は、大切に甘やかされ過ぎて、近所でも有名な我儘娘。

上手くいかないことがあると、全部親のせいにします。

「あたしがこんな目にあったのは、お父っつあんのせいよ」が口癖。

嗜めようとした父親を、川へ突き落としたことも。

見かねたるいが

「了見違いも大概にしなさい」

と諌めても、横から父親が、本当は親思いの子なんですと、庇ってしまいます。

周囲にあてつけるように家出をし、悪い男と関係を持つお鹿。

キチンと叱れない親が、ああいう子にしてしまった訳で……。

ある意味、気の毒とも言えますが。

最後まで好き放題に生きたお鹿が川で死に、周囲は親がホッとしたのではないか、と囁きますが。

お鹿の両親の言葉に、どこまでも親なのだ、と思わされます。

現代にも通じるような一作です。