ごく普通の日常がドラマチックな『昨夜のカレー、明日のパン』

テレビドラマの脚本家である木皿泉さん(ご夫婦でのユニットのペンネーム)の初の小説です。若くして夫を亡くしたテツコは夫の父親であるギフと今でも同居しています。世間的には不思議な家族である二人と、そこにからんでくるテツコの彼氏の岩井さんの物語。時間的な行き来はあるものの、連作小説になっていて、物語ごとに主人公が入れ替わります。テツコの死んだ夫も出てきます。

日常的な小さな事件は起こるものの、特に大事件はなく(ギフが詐欺にあったのが一番大きな事件かな)、ありふれた日常の中で、テツコとギフが夫(息子)の死を少しずつ乗り越えていく様子が淡々と描かれています。大きな笑いはないけれど、全体的にユーモラスな雰囲気があふれています。夫が死んだ後もギフと同居を続けるテツコに対し、世間がどんな風に考えるか、と家を出ることをすすめるテツコの彼氏・岩井さんが次第にギフと親しくなっていき、詐欺に遭った相談をされたりするのも可笑しく、また不自然でない描かれ方になっています。

思い返してみると、岩井さんも詐欺まがいにあっているし、若い頃のギフがギャンブルにはまった話なんかもあって、大人のリアルな日常が描かれているのに全体的にほんわりしていて、どこか童話のような雰囲気のある小説でした。タイトル通り、食べ物の話もよくでてきます。テツコとギフが通販で注文するという名古屋のおでんや、岩井さんが何故かパンケーキを食べたがったり。そのあたりも楽しい小説でした。