花世の嫁入り「新・御宿かわせみ 花世の立春」

明治のかわせみも、本作で三冊目。

今回は、亡き源三郎の息子・源太郎が、長年の恋の相手・花世と祝言を挙げます。

小さい頃から名コンビだった二人。江戸時代なら身分差があり、決して夫婦になれなかったけれど、明治の今なら問題ありません。

維新の、良かった点ですね。

人によっては、維新のせいで不幸になりましたが……前巻の「士族の娘」のように。

ともあれ、ようやく両想いになったかと思いきや、早速、七日後に祝言をする!と宣言するのが、花世らしいところ。

思うところはあれど、結局彼女の決断を受け入れるのは、優しい源太郎らしさですね。

弁護士目指して勉強中の源太郎に、世間知らずの花世。

お金は無いけれど、周囲の心尽くしで暖かく、簡素な式を挙げます。

その様子をそっと見守る、両家の親達。

苦労はしても、たくさんの人に祝福された二人は、きっと幸せになるでしょう。

赤ん坊の頃から二人を可愛がってきた長助の喜びようは、並大抵ではありません。

それにしても、ここに亡くなった源三郎や源右衛門、七重に小太郎がいてくれたら。

もちろん、東吾も。

亡き人達がこの光景を見たら、どんなに喜んだでしょう。

そう思うと、嬉しさの中に、少しの切なさが混ざります。

収録作の中ではもう一編、「俥宿の女房」が印象的でした。

人の妻になってから、かつての恋人に再会した女性。

維新のせいで引き裂かれた人々の人生を、静かに描きます。

失くした物を取り戻すため、犯罪を犯しますが、もう、同じモノを得ることは出来ないのでした……。