きらびやか、だけど恐ろしい「宵山万華鏡」

「宵山万華鏡」は、その名の通り宵山祭りをテーマにした、連作短編集です。森見登美彦先生の作品らしく、これも京都が舞台。

心踊る祭りの雑踏で起きる、不思議で、そして恐ろしい出来事たち。

主人公は各話ごとに変わり、彼らの経験を合わせることで、真相が見えてきます。例えば、バレエの帰りに祭りを覗いた幼い姉妹。

京都に帰って来た社会人、画廊を経営する男性、その知人女性。

全ての話に出てくる、赤い浴衣を着た少女達は何者なのか。
その正体は、かつて従妹が宵山祭りで行方不明になった女性の話で、明らかになります。
二十年前と変わらない姿で、終わらない宵山の世界に生き続ける従妹。
彼女を探し続けた父親もまた、自分の意志で、永遠に続く宵山の世界へと向かいます。
きらびやかで、でも油断すると引きずり込まれる、お祭りの世界。
終わらない宵山を何日も繰り返す男性は、亡き父の死の真相に気付き、幼い姉は、はぐれた妹を取り返そうと、祭りの最奥へと潜ります。
沢山の提灯に山鉾、招き猫に、謎の入道と舞妓さん。

物語は不思議な世界と現実を行き来し、読む者を翻弄します。
祭りが終わる前に、日常へ戻れるのか……。綺麗で不思議な、お祭りの特別な空気の中、ふと恐ろしくなる。そんな読書体験が出来ます。